「こっちの橋は壊れてるみたいよ。向こうから行きましょう」
鍵のかかったボート小屋を無視して先へと進んだ一行は、中央部分がぽっかり抜けた橋を迂回することになった。
大した距離ではないので誰からも異論は出ない。
ザスは意図的に歩調を落とし、後ろのルーシェに並んだ。
「酒場で一体何をやらかしたんだ?」
「え?」
「とぼけるなよ。派手に騒いだんだろう?」
「いいえ」
即座に否定したのは別にザスを気遣ったわけではなく、彼にとってあの一件が「派手な騒ぎ」ではなかったために他ならない。
その証拠に赤毛のファイターは胡乱な眼差しを向けている。
「じゃあ、護衛の騎士がいないのは何故だ?」
「それは彼が騎士ではなくなったからです」
「どうして騎士じゃなくなったんだ?」
「私が位を剥奪したからです」
「俺はその理由を聞いてるんだよ」
「彼が騎士にふさわしからぬ行動をしたからです」
「それを騒ぎと言うんじゃないのか?」
「そうですか?」
「教会に入ってから感覚がボケてんじゃねぇか、叔父貴」
「嫌な呼び方……。私は貴方に肉親の情なんて感じていませんよ?」
「それは、お互い様」
気が付くと二人はヴァリスとエナンにずいぶん遅れていた。
「ちょっと、何をマッタリ話し込んでるのよ! あたしたちにだけ戦わせるなんてズルいじゃない!」
何らかの仕掛けが施されていたらしく、先行組の二人は柵に囲われた一画に閉じこめられていた。
「これ、どうやったら開くのよ~」
こんな狭い場所にわざわざ出現しなくても良いだろうに。モンスターは意外と働き者のようだ。
質の悪いゴブリンシャーマンが今日も今日とて、マジックミサイルを連発する。
ザスは腰の高さにある柵をひょいと越え、戦いに参加した。出るのは無理だが、入ることはできるらしい。
「開いたぞ」
と、エナンが無感動な口調で告げる。
一行が一定数以上のモンスターを倒すと開くのだと理解したのは、再び同じ仕掛けに填った後だった。
「小技ながら苛立ちを誘う、実に心憎い仕掛けですね。素晴らしい」
「是非とも制作者に会いたいものだな」
「あんたたち変よ! 絶対に変!」
「そこに俺まで加えるなよ、ヴァリス」
万事こんな調子ながら、レベルの上がった一行は森をサクサク進んでいった。
「これがあの有名な『マルドの大滝』ですね。私、初めて見ました」
水飛沫のヴェールの向こうで、対岸が霞んでいる。
「渡る……のか……?」
やや高所恐怖症の気があるザスが顔を引きつらせていた。
対岸までの距離もさることながら、滝の落差もかなりのものだ。
橋が架かっていないのは、明らかに何者かの悪意に満ちた作為だろう。
所々に突き出た岩のあいだを不自然なまでに丸太が流れていく。
「この丸太も足場にして渡れってことよね、きっと」
「嘘だろ……」
すぐ右手は奈落の底。タイミングを誤れば、丸太ともども滝壺へ真っ逆様だ。
「そう言えば、でん○×▽■☆◇~!」
何かを言おうとしたルーシェの口を、ザスがいつもの倍はありそうな素早さで塞いだ。
――でん?
エナンとヴァリスが先の予想できない言葉に首を傾げる。
「ホラ、サッサト行コウゼ!!」
無理に作ったとバレバレな明るい声と笑顔で、赤毛のファイターが一行を促す。
丸太以上に不自然な態度。右手と右足が同時に前へ出るぎこちない動きと、額に浮いた冷や汗は、いったい何が原因なのだろうか。
――でんホニャララ、のせい?
寡黙なハンターとオネェ言葉のエルフは、それからしばらく答えの出ない問いに苦しんだ。
鍵のかかったボート小屋を無視して先へと進んだ一行は、中央部分がぽっかり抜けた橋を迂回することになった。
大した距離ではないので誰からも異論は出ない。
ザスは意図的に歩調を落とし、後ろのルーシェに並んだ。
「酒場で一体何をやらかしたんだ?」
「え?」
「とぼけるなよ。派手に騒いだんだろう?」
「いいえ」
即座に否定したのは別にザスを気遣ったわけではなく、彼にとってあの一件が「派手な騒ぎ」ではなかったために他ならない。
その証拠に赤毛のファイターは胡乱な眼差しを向けている。
「じゃあ、護衛の騎士がいないのは何故だ?」
「それは彼が騎士ではなくなったからです」
「どうして騎士じゃなくなったんだ?」
「私が位を剥奪したからです」
「俺はその理由を聞いてるんだよ」
「彼が騎士にふさわしからぬ行動をしたからです」
「それを騒ぎと言うんじゃないのか?」
「そうですか?」
「教会に入ってから感覚がボケてんじゃねぇか、叔父貴」
「嫌な呼び方……。私は貴方に肉親の情なんて感じていませんよ?」
「それは、お互い様」
気が付くと二人はヴァリスとエナンにずいぶん遅れていた。
「ちょっと、何をマッタリ話し込んでるのよ! あたしたちにだけ戦わせるなんてズルいじゃない!」
何らかの仕掛けが施されていたらしく、先行組の二人は柵に囲われた一画に閉じこめられていた。
「これ、どうやったら開くのよ~」
こんな狭い場所にわざわざ出現しなくても良いだろうに。モンスターは意外と働き者のようだ。
質の悪いゴブリンシャーマンが今日も今日とて、マジックミサイルを連発する。
ザスは腰の高さにある柵をひょいと越え、戦いに参加した。出るのは無理だが、入ることはできるらしい。
「開いたぞ」
と、エナンが無感動な口調で告げる。
一行が一定数以上のモンスターを倒すと開くのだと理解したのは、再び同じ仕掛けに填った後だった。
「小技ながら苛立ちを誘う、実に心憎い仕掛けですね。素晴らしい」
「是非とも制作者に会いたいものだな」
「あんたたち変よ! 絶対に変!」
「そこに俺まで加えるなよ、ヴァリス」
万事こんな調子ながら、レベルの上がった一行は森をサクサク進んでいった。
「これがあの有名な『マルドの大滝』ですね。私、初めて見ました」
水飛沫のヴェールの向こうで、対岸が霞んでいる。
「渡る……のか……?」
やや高所恐怖症の気があるザスが顔を引きつらせていた。
対岸までの距離もさることながら、滝の落差もかなりのものだ。
橋が架かっていないのは、明らかに何者かの悪意に満ちた作為だろう。
所々に突き出た岩のあいだを不自然なまでに丸太が流れていく。
「この丸太も足場にして渡れってことよね、きっと」
「嘘だろ……」
すぐ右手は奈落の底。タイミングを誤れば、丸太ともども滝壺へ真っ逆様だ。
「そう言えば、でん○×▽■☆◇~!」
何かを言おうとしたルーシェの口を、ザスがいつもの倍はありそうな素早さで塞いだ。
――でん?
エナンとヴァリスが先の予想できない言葉に首を傾げる。
「ホラ、サッサト行コウゼ!!」
無理に作ったとバレバレな明るい声と笑顔で、赤毛のファイターが一行を促す。
丸太以上に不自然な態度。右手と右足が同時に前へ出るぎこちない動きと、額に浮いた冷や汗は、いったい何が原因なのだろうか。
――でんホニャララ、のせい?
寡黙なハンターとオネェ言葉のエルフは、それからしばらく答えの出ない問いに苦しんだ。
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